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大和(西香)「お前が暗くなるなって。
それに雑誌だけでも俺は楽しめてるんだからさ」
文月「そうか」
西香は笑顔で言い放ったが、やっぱりどこか無理しているように見えた。
文月「あのさ、全身出てるお前に削除(デリート)で触れたら強制的に東の中に戻るのか?」
大和(西香)「試してみるか?」
そう言って西香は左手を開いて顔の前に突き出してきた。
文月「なんか自信あるな」
大和(西香)「触れてみれば分かるって」
俺は突き出された左手に右手で軽く触れた。
少し冷たいくらいの体温が手を通して伝わってくる……………おまけに掌とはいえ、スベスベのプニプニだ。
文月「ってあれ?
消えないのか?」
大和(西香)「ふっふっふ……………凄いだろ?」
勝ち誇ったと言わんばかりの笑顔で踏ん反り返っている西香に少しだけ敗北感を感じた。
大和(西香)「同体人物(ドッペルゲンガー)のスキルはな、正真正銘の人を作り出せるから俺はスキル兼人間って事になってるんだ。
まあスキルの使用者と作り出された人間の二人は別々の時だけ影が無くなるんだ」
文月「影が無くなる?
……………………おお、本当に影無しだ」
寮の廊下の窓から差し込む夕日の光りに当たっている西香に影は無かった。
そんな会話をしながら歩いていたら、東の部屋に着いた。
部屋の前のプレートには、
『285室
大和 東
大和 西香』
と、書いてあった。
文月「これほぼ一人部屋じゃねーか?」
大和(西香)「一人で二人なんだから仕方ないだろ。
俺だって本棚とか一応欲しいしさ」
文月「それもそうか」
俺はなんとなく納得して西香に続いて部屋に入った。
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