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「ちょーだい」 「嫌だ」 「何で」 「俺のお気に入りなの」 2月13日の昼休憩。 暖房がガンガンきいた教室で、俺と翼は毎日同じやり取りをする。 この会話をするのは今日で363回目。 翼がガチャでゲットしたチョコレートのシークレットキーホルダーを学校に持ってきた日から、飽きもせず毎日のようにしている。 なんで俺がそんなにキーホルダーを欲しがるのかは簡単な話。 俺がそのキーホルダーを集めていて、翼が持っているキーホルダーがあったら全種類集めた事になるからだ。 昨年のバレンタインデーの日に突如現れたそのガチャは瞬く間になくなり、再販されることもなく姿を消してしまったので、俺はどうしてもそれが欲しかった。 「翼のケチ。俺がこのシリーズ集めてるの知ってるっしょ?」 「知ってるけど、だからなに?圭人も毎日毎日よく飽きないね」 「くれたら静かになるからはやくくれよ」 「嫌だね」 「なあ、俺達親友だろ?頼むよ、翼ちゃん」 「親友とか関係ないよ、圭ちゃん」 「翼うっざ」 「圭人の方がうるさ……ふご!」 ああ言えばこういううるさい口にだんだんとイライラとしてきて、翼の腹立つくらいすべすべの頬っぺたを両手で掴むと、手加減無しで思いっきり横に引っ張ってやる。 「いひゃいんやよ!」 すると何だかよくわからないことを言われながら頬っぺた引っ張り返されて、そのままプチ乱闘がはじまる。 それはいつもと変わらない流れで、日課になりつつある出来事だった。
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