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「今日はバレンタインでーす!ということで、うっちーにチョコあげるね!まあ、もちろんギリだけどっ」 ドキドキとはやくなる鼓動はそのままに、しばらくの間、翼の言わんとすることを読み取ろうと、あれこれと思考を巡らしていると、クラスメイトの女の子のそんな声が聞こえてきて。 ある考えが頭に浮かんで、ハッとする。 だが、その答えが正解だとは思えない。 だって俺も翼も男で、もらったのはただのキーホルダーで、そもそもこいつはそんな乙女チックなことをするような奴ではないから。 それは数年一緒にいてだいたいこいつの事は把握しているからわかる。 ありえない、ありえない、と思いつつも他に考えが思い浮かばなくて、頭の中がぐるぐるとする。 さきほどの翼みたいに不自然に視線をきょろきょろとさせていると、何の前触れもなく握っていた手を引っ張られて、翼の胸に倒れこんでしまう。 そのまま強い力で抱きしめられると、俺に負けないくらい速く動いている翼の鼓動が耳に響いた。 「ちなみに、俺のは本命だから」 顔が近づく気配がしたかと思うと、耳のすぐ近くで消えそうな声でそう言われて、ありえないと思っていた考えは肯定されてしまう。 けれども不思議とそれを不快だとは感じなくて。 そんな自分にビックリしつつも、 抱きしめられたまま、俺は自分の心臓が落ち着くのをじっと待ったのだった。 END
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