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「ねぇ、奇跡って信じる?」
君は僕にそう尋ねたね。
鼻にかかった甘えた声で。
「奇跡? 君はそんな曖昧なものを信じてるのか? この世界で起こっている物事は全て、誰かが起こした行動とその結果でしかないんだよ」
そう答えた僕に、君は「可哀相な人」と言いながら、擦り寄ってきたね。
甘い肌の匂いを漂わせながら。
でももう君は、そんな夢見がちな言葉を口にする事は出来ないだろう。
だって愛しい君の、華奢な首に手をかけ、男をたぶらかす言葉を吐く口から呼吸を奪ったのは僕なのだから。
媚びを売るかのような潤んだ瞳から、その輝きを奪ったのは僕なのだから。
これで君は僕だけのものだ。
誰にも渡さない。
愛しい君を。
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