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広い中庭を執事らしき男について歩きながら、榎本は無意識に彼の手に握られた鍵束に視線を向けていた。
その視線を感じ取ってか、男が玄関についた所で話し出す。
「この鍵に何か?」
戸を開けて榎本を通し、後に自分が入りながら執事は鍵束を持ち上げた。
「いえ、何か特殊な鍵の様ですね。
鍵穴に射し込んで開けるまでに大分時間がかかっていた様ですので」
榎本の指摘に執事は少し目を丸くしてから、その端整な顔立ちに美しい笑みを浮かべた。
「ご指摘の通りでございます。
こちら私が仕えております宝生家独自の技術でお造りになられました特殊な鍵でして複製はおろか合鍵も存在しておりません。
門を解錠するにも鍵穴に射し込んでから三通りの回し方をしなければ開かない仕組みとなっております」
鍵の仕組みを見破った榎本に感嘆の意を表しながら、執事はそれを得意気に説明して見せた。
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