無愛想で不器用

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「でも最近は違います」 榎本がいつもの無表情を青砥に向ける。 青砥はいきなり榎本が自分の方を見たので面食らった様だった。 「鍵以外の事も最近は考える様になりました。 あなた方のおかげで」 人間に興味を持てました。 榎本はきょとんと目を丸くする青砥に対して、柔らかく口許を弛めて見せた。 初めて見る、それは不器用な榎本なりの精一杯の微笑みだった。 榎本の言っている意味が理解出来ず首を傾げる青砥だったが、彼の笑顔にまたもやそんな疑問は吹き飛んでしまった。 「お茶、飲みますか」 榎本がゆっくり立ち上がり青砥に背を向ける。 「あ、はい。 それじゃいただきます」 お茶を淹れる榎本の背中を見つめながら青砥はさっきまでの彼の言葉の意味を考え始めていた。 だからこそ、お茶を淹れている榎本の顔が耳まで赤くなっている事は知る由もなかった。 【無愛想で不器用・完】
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