未練のない幽霊

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「……ねぇ、松場君これ先生から預かってきたプリントなんだけど」 一人のクラスメートが教室の窓側の一番後ろに座っている松場李織に話しかける。李織は横目で話しかけてきた子を見た。手に1枚のプリントを持っていて、こちらに差し出している。 「……あぁ」 「ありがとう」とお礼を言おうとクラスメートの子を見ると、目があった途端「ひゃっ」と後退られ、足早に李織から離れていった。 「ひゃって……」 虚しく机の上に、乱暴に置かれたプリントをじっと見つめる。 「ちょっと松場君に失礼じゃんあの態度~」 「だってー……なんかあの目で見られると怖いっていうかさ……」 さっきのクラスメートとその友達がひそひそと話す声が聞こえる。 「確かにねー、不思議だよねなんか。本当……黒猫みたいだよね」 ――黒猫 李織はよく周りの人にそう言われる。真っ黒な髪、そして真っ黒な瞳を持っているせいだと思う。
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