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私が広一さんの部屋に転がり込んだのは、5月に入ってすぐ…連休の始まる一晩前のことでした。
その日私は広一さんと朝から出かける約束をしていたので、少しでも長く一緒にいたいと、早朝4時に家を出たのでした。
愛車を走らせ、10分程度の場所に広一さんのお家があります。
事務所と自宅が隣接している彼の家は、地元でもかなり有名な、不動産関係の会社です。
私は近くの市営駐車場に車を止め、着いたことを知らせるためにケータイを取り出しました。
その時でした。
目の前の道を、黒のワンボックスが通過しました。
私は、その車と、運転している人物を知っていました。
こちらをちらりと一瞥して通り過ぎていくのは、紛れもなく、私の父だったのです。
父がこんな早くから出かけるなんてことはありえません。
私の家は料理屋なので父が市場に食材を買いに行くことはあっても、こんな所を通るはずがないのです。
そう、父は、私の後を着いてきたのでした。
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