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秋も深まり、より冷たくなった風が色付いた葉をさらい、道を赤に染めている。
街はすでにクリスマスムードで、行き交う人々は笑顔で溢れていた。
「……はぁ…」
しかし窓一つ隔てた空間では、最早クリスマスも過ぎ、雪が深く積もっている様な空気であった。
そして、その原因となっているのが
「………はぁ……」
このため息。
手に顎を乗せ、行き交う人々を窓越しに見つめている。
机の上に開いている本も逆さまだ。
そしてまた……
「…………はぁあ……」
「どうしたのリュリちゃん、さっきからため息ばっかり」
リュリと向かい合って帳簿を付けていた雑貨屋の女主人マダム・ルイスが心配そうに声をかけた。
「クリスマスが近くなって、お客さんたくさん来られるからねぇ…疲れがたまったんでしょう?
そうよね?そうに決まってるわ!さぁさぁ帰り支度をし!!」
彼女は唯我独尊で、自分は常に正しいと思い込んでいる、少々困った女性だ。
イライラしていたとあるファミリーに呼び出されたにも関わらず、ものの30分で御帰還なされた事もある…らしい。
しかし根はとっても優しいので、皆に頼りにされている"姉貴"的存在だ。
「えっ!?マダム、私は大丈夫です!ほらこんなに元気ですし…」
「あんたねぇ、疲れは風邪のもとなのよ!
お店の方は大丈夫だからあんたはさっさと家に帰ってさっさと寝てなっ!」
こうなっては、マダムは絶対に退かない。
よってリュリはおとなしく帰路へとついた。
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