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リュリは急いで黒猫を追った。
大通りは人がいっぱいで、黒猫を追い掛けるのは至難の技だった。
一瞬、目で追えなくなってしまったが目を凝らすと、薄暗い路地に入って行くのが見えた。
「もう、待ちなさいってば!……キャッ!!」
「おっと!!」
猫に夢中で下ばかり見ていたので、その路地から出てきた人にぶつかってしまった。
「大丈夫かい?」
倒れそうになったリュリを支えてくれたのは黒い服を着た、長い銀髪に金瞳の青年だった。
シルクの様な銀髪と宝石の様な金瞳に、リュリはしばらく青年の腕に抱かれながら見惚れてしまった。
「大丈夫かい、お嬢さん」
「……あっ、はい、大丈夫です………あっすみません!」
青年に支えてもらっていた事を思い出したリュリは、顔を真っ赤にさせながらバッと自分で立った。
「よかった、怪我が無くて」
青年はリュリに向かって微笑んだ。
その笑みにリュリ自身も自然と笑顔になった。
「ところで、君はこの街に住んでいるのかい?」
「はい、そうですけど…どうかなされたんですか?」
「私は銀行員なんだけど、実は…道に迷ってしまったんだよ。
この街に来るのは初めてでね…だから君に道案内を頼みたいんだ」
青年は恥ずかしそうに答えた。
「構いませんよ、どこに行きたいんですか?」
「本当かい!?じゃあお願いするよ、クラリア孤児院に行きたいんだ」
「はい!こっちです」
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