6人が本棚に入れています
本棚に追加
リュリと青年は人々で溢れかえる大通りを歩き始めた。
「そういえば君、名前は?」
「リュリです、リュリ・ランフォード」
「リュリちゃんか、可愛い名前だね。
私はジェイド・ウィリアムズだ、よろしく」
話によると、ジェイドはいろんな人から送られてくる寄付金を、必要としている所へ送り届ける仕事をしているらしい。
だがまだ新米で、新しく担当するこの街を完全に把握できていないという事だった。
そういった話をしているうちに目的地に辿り着いた。
「ここがクラリア孤児院です」
「いや本当に助かったよ、ありがとう」
ジェイドは笑顔で礼を言った。リュリもつられて笑顔になり、もと来た道を歩き始めた。
その背中を見送り、ジェイドは鍵を開け孤児院の中へ足を踏み入れた。
リュリがもう少しマダム・ルイスの世間話に耳を傾けていたら、この孤児院が数ヵ月前に閉鎖された事に気付いたかもしれなかった。
薄暗い孤児院のホールには、あの黒猫が銀のブレスレットを咥えて座っていた。
ジェイドは黒猫からそれを受け取った。
「リュリ・ランフォード……恨むなら自分自身を恨むことだね…」
そう言って、ジェイドは口元には笑みをこぼし、ブレスレットを弄びながら呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!