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…フッと光が消えた
「だ、誰?私の首を触ったのは?」
その声と共に辺りに騒めきが広がる。
そして何の前触れもなく光が灯った。
「きゃゃぁぁぁあああ!!!」
「御嬢様!?どうなさいましたか!!」
「ない!ないわ!私のネックレスが!!」
その声に周囲が騒然とする。
今晩はこの家の令嬢の16歳の誕生日会が行われていた。
彼女の父であり、この街の当主が、自分の愛娘のためにと言って、街人から高い税を強制的に集め、その金で最高級のアンティークネックレスを買ったのだ。
そして、たった今そのネックレスが一瞬の内に消え去ったのだ。
「奴だ!!」
パーティーの参加者の1人が叫んだ。
「奴が来たんだ!!」
そう令嬢の何かを指指しながら叫んだ。
いつの間にか彼女の髪を飾っていた黒い薔薇を…
19世紀末フランス、秋
そこではある話題が持ちきりだった。
「ねぇ聞いた??また出たらしいよ…」
「知ってる、ロイロット侯爵の愛娘メアリ嬢の"蒼いルビーのネックレス"だろ?」
「あれって街の人からぼったくった金で買ったらしいじゃねぇか…」
「マジで!?」
「それ聞くと侯爵様ざまぁって感じ」
「俺はコソ泥さんを応援するぜ。やってるコトえげつねぇけど、なんかクールなんだよな!」
「私も絶対泥棒さん派!!盗んだ物の代わりに黒い薔薇を置いてくってロマンチックよね~」
「警察もお手上げらしいぜ。
なんてったって奴は神出鬼没、大胆不敵、姿を見たものは誰一人いないんだからな…」
「ちょっとみんな、さっきから泥棒さん泥棒さんって…知ってるでしょう??彼の名前は―――――」
夜の闇を音も無く駆け抜け
華麗な手さばきで獲物を奪い取り
黒い薔薇を置いて行く
そんなどこかの役者のようにキザな泥棒のことを世間の人々はこう呼ぶ―――
"The Phantom of the Opera"
『オペラ座の怪盗』と――――
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