6人が本棚に入れています
本棚に追加
「50年前、ある名門貴族が何者かの手によって全員皆殺しにされるという事件が起こりました。
屋敷は血の海で死体だらけだったそうですが、当時の当主の17歳の一人息子の遺体だけ見つからなかったそうです」
ユーリはここで一息入れた。
ジルは微笑みながらユーリを見つめ、セルはソファーに腰掛け瞳を閉じていた。
「そしてその事件の5年後、ある怪盗が世間を騒がせ始めました。
闇夜を音も無く駆けるその姿を見て、人々は彼の事を"ブラックキャット"と呼びました。
警察の手を何度もすり抜け、彼は30年間闇の世界に君臨していました。
しかし、ある日を境にプッツリと消息を絶ったのです。
それが15年前の事です」
「…ブラックキャットの事は俺もよく知っている。
だが今の話と今回の事はどんな関係があると言うんだ?」
セルは腕を組みしかめっ面でソファーにふんぞり返っている。
「貴方本当に気付いてないの?それとも真実と向き合いたくないだけなの?
貴方ってたまに…バカよねぇ…」
ジルが呆れた様に肩をすくめた。
「ユーリちゃんはとっくに気付いてるのに…」
「…おい、ジル、もう一回言ってみろ?」
「あら、ごめんなさい。
じゃあそんな貴方の為にヒントをあげるわ…」
喧嘩を吹っかけたセルをスルーし、ジルは話を進めていく。
「…"ブラックキャット"の姓はランフォードよ」
「…おい待て…ランフォードだと?例の小娘と同じじゃないか!?
まさか血縁関係でもあるのか…?」
混乱するセルをジルの言葉がさらに追い詰めた。
「もっと言うと、50年前に消えた貴族もランフォードよ」
セルは脱力し、ソファーにもたれかかった。
ユーリも窓の外を頑なに見つめており、ジルも自分の長い銀髪を弄んでいる。
誰も言葉を発さない沈黙―――
最初のコメントを投稿しよう!