第2話

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「…ジル」 「…何かしら?」 少し間を開けてセルが口を開いた。 「協会にはブラックキャットの"部屋"があるだろう。 行って確かめて…「もう行ってきたわ」 セルの言葉をジルがスッとさえぎった。 「たまたま鍵が手に入ったから興味本意でね。 受付はクリア出来たけど、奥がねぇ…」 ジルがハァッとため息をついた。 「ですが所有者が死ねば"部屋"は開放されるはずなのでは?」 外から目を離しユーリが会話に加わってきた。 「あたしもそう言ったわよ。 でもアイザの奴無理です、の一点張りで…」 「…お前、アイザに会ったのか?」 「好きでアレに会ったわけじゃないの!! 話の腰を折らないでくれるかしら、続き教えてあげないわよ…」 セルをジルはキッと睨み付けた。 「…悪かった」 「感情がこもってないけどまぁいいわ。 アレが言うには『所有者が死ぬ』=『血が途絶える』ってコトらしいの。 で、さっきの話に繋がるんだけど、あの小娘が本当にブラックキャットの、ランフォードの血筋なら"部屋"の相続権は彼女にあるってわけ」 「ゆえに鍵があっても入れない…さらに"コード"も必要だということなのですね」 「そうゆこと」 再び沈黙が訪れたが先程とは違う空気だった。 「…つまり、"コード"さえ分かれば"部屋"に入れるんだな?」 スッとセルが顔を上げた。 「…そ、そうだけど…」 「そして"コード"はあの小娘が知っている可能性が高いんだな?」 「…旦那様何を…?」 不安げな言葉を無視して、セルは立ち上がりこう告げた。 「…怪盗とは与えられる者ではなく、奪い取る者だ… 欲しい物は必ずこの手に入れる…」 自分を見つめる2人の従者をセルもまた見つめ返した。 向かい合う眼差しから伺えるのは――信頼と忠誠心 「ユーリ、明日の晩にお客様がお見えになる。 マダムとシフォンに晩餐の準備と客室の清掃をするように伝えろ」 「かしこまりました」 「ジル、迎えの馬車の用意をするようロイドに言え。 後はお前に任せる」 「あら、いったい何をする気なのか教えて下さる?」 ジルが分かり切った事を聞いた。 「…欲しい物を奪い取る」 瞳を細めているジルに、セルは悪戯を思いついた子供のような笑みで答えた。
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