6人が本棚に入れています
本棚に追加
「…ジル」
「…何かしら?」
少し間を開けてセルが口を開いた。
「協会にはブラックキャットの"部屋"があるだろう。
行って確かめて…「もう行ってきたわ」
セルの言葉をジルがスッとさえぎった。
「たまたま鍵が手に入ったから興味本意でね。
受付はクリア出来たけど、奥がねぇ…」
ジルがハァッとため息をついた。
「ですが所有者が死ねば"部屋"は開放されるはずなのでは?」
外から目を離しユーリが会話に加わってきた。
「あたしもそう言ったわよ。
でもアイザの奴無理です、の一点張りで…」
「…お前、アイザに会ったのか?」
「好きでアレに会ったわけじゃないの!!
話の腰を折らないでくれるかしら、続き教えてあげないわよ…」
セルをジルはキッと睨み付けた。
「…悪かった」
「感情がこもってないけどまぁいいわ。
アレが言うには『所有者が死ぬ』=『血が途絶える』ってコトらしいの。
で、さっきの話に繋がるんだけど、あの小娘が本当にブラックキャットの、ランフォードの血筋なら"部屋"の相続権は彼女にあるってわけ」
「ゆえに鍵があっても入れない…さらに"コード"も必要だということなのですね」
「そうゆこと」
再び沈黙が訪れたが先程とは違う空気だった。
「…つまり、"コード"さえ分かれば"部屋"に入れるんだな?」
スッとセルが顔を上げた。
「…そ、そうだけど…」
「そして"コード"はあの小娘が知っている可能性が高いんだな?」
「…旦那様何を…?」
不安げな言葉を無視して、セルは立ち上がりこう告げた。
「…怪盗とは与えられる者ではなく、奪い取る者だ…
欲しい物は必ずこの手に入れる…」
自分を見つめる2人の従者をセルもまた見つめ返した。
向かい合う眼差しから伺えるのは――信頼と忠誠心
「ユーリ、明日の晩にお客様がお見えになる。
マダムとシフォンに晩餐の準備と客室の清掃をするように伝えろ」
「かしこまりました」
「ジル、迎えの馬車の用意をするようロイドに言え。
後はお前に任せる」
「あら、いったい何をする気なのか教えて下さる?」
ジルが分かり切った事を聞いた。
「…欲しい物を奪い取る」
瞳を細めているジルに、セルは悪戯を思いついた子供のような笑みで答えた。
最初のコメントを投稿しよう!