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急ぎ足の帰り道
時々見え隠れする大通りの喧騒はだんだん増しているようだった。
しかし、リュリは気が付かない。
「あっ」
道の真ん中に黒猫がいた。
赤い瞳が暗い路地に不気味に光っている。
そして、ここは自分の場所だと言わんばかりに堂々と座っている。
リュリは動物が全般的に好きだ。小さい頃なんて、動物の言葉が分かると言っていた程だ。
そのせいか、今のリュリにはその猫の隣を駆けてゆく勇気はなかった。
どうしようかと思い、黒猫から目をそらすと不意に"工事中につき立入禁止"と書かれた看板が目に入った。
その横に目をやると、歩いてきた路地よりもさらに暗い細い路地が闇に延びていた。
そこはまるで異世界への入り口のようだった。
「工事中か……ちょっとだし大丈夫よね」
寒いのとお腹が減ったのとで早く帰りたかったリュリは、意を決してその路地に足を踏み入れた。
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