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工事は終わりかけているようだが足下はまだ凸凹している。
「ほんとに真っ暗…それに狭いわ…工事の人も大変そうね……」
そうこぼしながら足を速めていく。
何回も角を曲がり、やっと道も空も開けたところに出た。
その空にはここ何日間見れなかった星が瞬いていた。
「わぁ、綺れ…ぃああぁぁ!!!」
"い"と続くはずだったが、リュリにはその先の言葉を言う事ができなかった。
上を向いて歩いており、足下への注意がおろそかになったその時、これまた大きな窪みにつまずいてしまったのだ。
そして同時に腕に抱えていた"物"も宙にぶちまけてしまった。
「なんなのよ、もうっ!!」
地味に擦り傷ができており、それがまた地味に痛い。
痛みに耐えて立ち上がろうとしていたが、次に目にした光景がリュリの思考を奪い去ってしまった。
ふわりと舞い落ちてきた黒い"モノ"。
それを薔薇の花片だと気付くよりも前に、もっと大きな黒い"モノ"が音も無くリュリの目の前に舞い降りてきた。
黒いマントをなびかせて
黒薔薇の花片を纏い
白い仮面で目元を隠し
ニヒルな笑みを携えて
彼女はまだ知らなかった。
路地の闇よりも暗いその黒が自分の運命を大きく変えてしま
った事を――――
それは気が付かなかった。
自分を見つめる小さな影に、自分が"ルール"を破った事に――――
彼等がそれを知るのは、まだ少し先のコト
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