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第2話
フランス、街から離れた森の中、道無き道を歩いていくと一軒の屋敷が木々の間から顔を覗かせる。
それといって大きくない屋敷の壁の表面には、無数の蔦が絡まり今にも崩れてしまいそうだ。
そこだけ見れば、こんなボロ屋敷に人なんて住んでいないように思えるが、この家の庭を見た者はそんな言葉はまずでない。
庭の真ん中にある噴水を中心に、色とりどりのパンジー、黄色いマリーゴールド、大きなダリア、可憐な鈴蘭、真っ白な百合とその周りの薄ピンクの百合、様々な種類のチューリップ、アヤメ、蘭、スミレが咲き誇っている。
そして最も目を引くのが玄関近くの薔薇である。
色だけでも白・赤・ピンク・オレンジ・黄・紫・青・黒と種類豊富で、形に至っては大輪・小輪、一重咲・八重咲、剣咲き、平咲きとほぼ全ての種類が揃っている。
そんなにたくさん花があるのに、全く喧嘩せず、それでいてそれぞれの魅力を害なっていないので、ここを手懸けた庭師の優秀さが見てとれる。
そして、その芸術品の中を一つの影が歩いていく―――――
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