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屋敷の中に足を踏み入れると、なんとも言えない香りが鼻腔をくすぐった。
シックで落ち着いた雰囲気のホールには、大きなシャンデリアが控えめに輝いている。
奥には二階へと続く階段があり、そしてホールの中央には、香りの源と思われる色とりどりの花が咲き誇っている。
何一つ乱れる事無く完璧に調和している空間に二人が入ると、待っていたかのように奥の扉が開いた。
「お帰りなさいませ旦那様、お顔にまだあとが残っておりますよ」
落ち着いた声が空気を震わした。
「うるさい、仕事がある、邪魔をするな」
セルスティン(※以下セル)はこう言い放ち階段に足をかけた。
主の返事に微笑みながら、料理長でありユーリの右腕でもあるマダム・キュピレットは続けた。
「お食事のご用意が出来ておりましたが…いりませんでしたか…「いや、いる」
さっきまでの素っ気なさは何処へやら、セルはくるんと向きを変え食堂へ突き進んで行った。
そして彼の後ろでは、してやったりと言わんばかりにマダムがユーリにピースをし、それに対してユーリも親指をあげていた。
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