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既に食堂には食欲をそそる香りが立ちこめおり、後は食事を並べるだけだった。
「旦那様お帰りなさいませ!あっ!お顔に寝てたあと見っけ!!」
香りを楽しんでいるセルに、この屋敷のメイドが痛いところを付いてくる。
長い金髪を頭の横で二つに結い、柔らかなウェーブをかけ、大きな碧色の瞳をパチパチさせている。
「うるさい、知ってい…「シフォンさん、旦那様をあまりからかってはいけませんよ」
セルの後ろから入ってきたユーリがとがめた。
「こんなのですが一応当主なんですから「…お前も俺を怒らせたいのか…?」
ゾッとするような声と、スッと冷たい視線をなげかけた。
明らかに先程までと違う空気に、二人はただならぬものを感じとっていた。
「「いえ、申し訳ございません、出過ぎた言動どうかお許し下さい」」
「…以後気を付けるよう」
「「はい」」
ぴったり合っていた二人の声、それに答える主。
過去何度か繰り返されたような会話、感情の見えない応答の中、二人の瞳には"忠誠"、主の瞳には"信頼"を感じ取る事ができた。
「皆さぁん、そんなところに立っていないで、旦那様こちらへお座り下さぁい。
ユーリさんとシフォンさんは料理を運ぶのを手伝って下さいね」
たった今入ってきたマダムが、手を叩きながら言った。
「あっ、はい!!」
「旦那様、どうぞ」
「ああぁ」
先程の空気はいつのまにか消えていた。
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