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―カナカナカナカナ…
ある夏の夕暮れ時、ヒグラシが鳴く中で、楠直哉は農道を自転車で走っていた。
其れと言うのも妹の奏が、
「キーホルダー、落としたから探して来てくれない?」
と言った事がきっかけだ。
「…ったく、困ったもんだな…探すったって、大体近所は探したし…」
そう呟きながら、一旦辺りを見渡すと、遠くに人影が見えた。
(…あの人に聞いてみるか)
そう思った彼は、自転車をそちらに向けて走り出した。
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