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「本歌、だったな」
「あぁ」
「顔はそっくりなのに雰囲気が全く違う」
「そんな事言われたのは久しぶりだ」
近くに何も無い、そんな家に住む事になって。
広がるのはこれからの心配と、母の残してくれていった記憶だけ。
不安に取り込まれそうになった末に待つものとは何か。
「.....お前は結婚式場で見なかったな」
「丁度受験の日でな。後から行く予定だった」
「病院には逸早く駆けつけたらしいな。
本奇しか見なかった気がするんだが」
楓が無意識に投げかける質問に、
本歌の心は徐々に沈んでゆく。
それに気付く事なく、話を続ける楓。
「それから暫く会わなかったな。
記憶が正しければ本奇としか会わなかった」
「.....あの日」
「え?」
突然発せられた声に一瞬驚く楓。
だが本歌は続けた。
「受験会場に行く途中、事故を見た。
巨大トラックが、軽自動車に乗っかってる、そんな現場」
「........」
「見えたんだ。救急車に、乗せられてる、人」
母さんと、父さん、だった。
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