1人が本棚に入れています
本棚に追加
「風、舞、英、裕陽。後はお兄ちゃんがやっておくからもう寝ようね」
不信そうにも、二階へと上がる四人。
それを見届けると、本奇が走ったのは本歌の元。
「本歌、どうしたの」
抉られた昔、いやそう遠くない記憶。
消そうとしていた、必死に消そうとしていた。
「本歌、ここに居るよ。大丈夫だよ。」
血に塗れた顔が、目が見開かれたその顔が、
白い布で覆われる瞬間を。
力が抜けたかの様に、膝から頽れる本歌。
きっと、今彼の目に映っているのはあの日の記憶だけ。
「な、どうした!?」
「大丈夫、あの日の記憶が辛過ぎた、みたいでね。
僕にも話してくれないんだ。
.......ちょっと、待っててね。」
同じ身長の本歌を背負うと、ゆっくりと階段を上っていった。
残されたのは、呆然とした楓と、まだ水の滴る食器だけだった。
最初のコメントを投稿しよう!