第9話

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長い夏休みも終わった。今日は、始業式。 疲れる事も多々あったが、これまでに無い充実感を得た。夏休みに日焼けしたのって、生まれて初めてだ。 「ようし!行って来まーす!!」 学校に行くのが楽しみなんて感情を抱くのも、初めて。 フレッシュな気持ちで、玄関を開く。 「おはよう、飛鳥!学校に行こ?」 こんな所にもフレッシュの影響が。玄関先で待つ美少女。これぞリア充だ。って……。 「壇さん……?約束とか、してたっけ?」 「したよ?忘れたの?」 したっけ……?まあいいや。 「騎士んち寄っていこう」 ここも、夏休み前と違う点。和解した今、一緒に登校すると二人で決めた。一学期は入院してたから無理だったけど。 「……竜崎君ちに行くの?」 壇さんは、あからさまに嫌そうな顔をした。あれ……? 「壇さんって、騎士の事嫌いだったりするの?」 今までそんな素振りを見た記憶は無いが……。 「別に嫌いじゃないけど……。それより!」 プンスカ怒ってビッ!と鼻先に指を突き付けられる。 「私の事は祭って呼ぶ、って約束したでしょ?」 ええっ!? 「した……っけ?」 「したよ?忘れたの?」 あっれー……?そうだったっけ……。壇さ――ま、祭が嘘吐くとは思えないし……。 「今度から気をつけるよ。さっ、騎士の家に――」 「今、呼んで?」 笑顔で一歩、距離を詰められる。 「いや、もう時間あんま無いし――」 「今、呼んで?」 塀際に追い詰められた。鼻と鼻がくっつきそうだ。 「ま、祭――」 「うん、そうだよね!ずっと前からそう呼んでるんだから、それが自然だよ!!」 俺から離れ、身体を回転させて祭は喜びを露わにする。 ずっと前……?色々おかしくないか?
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