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見渡す限りの荒廃した大地。
草木はほとんど見受けられず、乾いた風の吹き荒ぶ荒野だけが広がる。
今からちょうど二百年前まで、この世界には自然が溢れていたらしい。
らしいとしか言えないのは、誰が記したかわからない書物でしかそれを証明できないからだ。
そして、そんな自然溢れる世界というのは、面影すらなくなってしまった世界に生まれた青年、ミルハからすれば御伽噺のようなものだった。
「大自然か……」
ミルハの口から小さく零れた呟きは、荒れる風が瞬く間にかき消してしまう。
緑豊かな山々や、穏やかに頬を撫でるそよ風なんて生まれて一度も経験したことがない。
おそらく、今後一生そんなものに縁なんてないんだろう。
……そうずっと思っていた。
「~~~~ッ、いよっしゃあーーー!!」
大声を張り上げながら、体全体で喜びを表すようにバンザイ。
風を受ける面積が広がったことでよろけながらも、ミルハの顔には満面の笑みが広がっていた。
「あとちょっとで自然が見れる! 昔の世界が見れる!」
まるで新しいおもちゃを与えられた子供のように地団駄を踏む姿は、他人から見れば遠ざかりたくなる光景だろう。
けれども、そんなこと関係ないとばかりにミルハは声と体を使い喜びを表していた。
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