序章

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大災害から長い年月が過ぎ、あの地獄の記憶が徐々に薄れていくなか、それでも世界は終わりに向かっていった。 草木は根付かず、新緑を芽吹かせることなく枯れていく。 僅かに生き残った動物たちは滅多に人前に姿を出さなくなった。 最盛期から見れば一割を切ってしまいそうな人口は、それでもなお減り続けている。 自然淘汰。 こんな言葉が的確に当てはまってしまうのが、今の世界の状況だった。 それでも人々は二百年という年月である魔法の創造と、大地震の原因となったものを解明する。 後退してしまった文明の中で、それでも多くの者たちが血の滲む努力で作り上げた史上最高の魔法。 【時間逆行魔法】 その名前のとおりに時間を逆行する魔法である。 この魔法は術式の組み立てに年単位の時間。 そして、魔法を扱うのに必要になるマナを膨大に消費する。 しかし、マナは大災害によりほとんどが消え失せ、今では自然に生産されなくなってしまっていた。 それゆえ、今の時代では【時間逆行呪文】は実質一度しか使えない大魔法とされている。 そして、使用されている術式のアルゴリズムにも複雑なものは組み込めず、単純な命令しか受け付けないくっている。 この魔法が受け付ける命令は以下の二つ。 1.過去に逆行する物が有機物か無機物か。 2.百年単位で逆行する時間を指定。 この【時間逆行魔法】はこの程度しか融通が利かない。 今年(正確には大災害から一分でも)を過ぎてしまえば、この魔法を使うチャンスは百年後となる。 また、逆行するものの個数は術式の関係で何であれ一個と決まっていた。
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