序章

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大地震の原因の究明は長い間停滞を続けていた。 だがある時、一人の名も無き賢者が世界を震撼させる仮説を唱えた。 それは、『この世界には意思がある』というものだった。 あの大地震はこの世界自体が自浄として引き起こしたものであり、世界から有害と判断された人類を滅ぼすことが目的だった。 そして、その自浄機能は未だに働き続けており、人類が絶滅するまで続くだろう、と発表した。 始めこそは異端とされ厳しい迫害を受け続けた賢者だったが、彼はその後も証拠となりえる仮説を唱え続けた。 一つは地震が発生した日時と場所。 日時は【遠距離型超広域爆破魔法】が使用された翌日。 そして、場所はその大魔法を使用した国の直下で起きた。 一つは大魔法を使用した国のその後。 多くの大地は津波に呑まれ荒廃はしたものの、それ自体は残っていた。 しかし、大魔法を使用した国は地割れに呑み込まれ、完全に海へと消えた。 一つは動植物。 荒廃はしたが草木は根付けば芽吹くものだ。 しかし、長い年月を経ても一向に根付くことなく枯れてゆく一方である。 また、犬や猫といった人間に慣れしんだ動物でさえ大災害以降は人間から離れるように消え、ほとんど姿を見せなくなった。 一つはマナの枯渇。 マナは大地や草木から生み出される自然の産物。 大災害により激減した草木からの供給はともかく、無尽蔵にマナを生み出すはずの大地が全くマナを生み出すことが無くなった。 これは一番の異常であるといえる。 これらの点から、世界は自らを壊しかねない国に攻撃を行い、それを完璧に消し去った。 そして、人類に食料を供給せず滅ぶのを待っているというのがわかる。 迫害され晒し者にされながらも、死ぬまで賢者は自らの仮説を唱え続けた。 彼の死から数年後、彼の研究を引き継いだ団体によりこの仮説、つまり『世界は意思を持っている』ということが証明された。
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