『お母さんのお膝』

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母はとても本が好きだった。 私が欲しいと言った本は何でも買ってくれ、週に1度は図書館へも連れて行ってくれた。 まだ私が幼い頃、寝る前になると決まって母が言う言葉があった。 「今日の絵本はどれがいい?」 私も決まってこう答える。 「これ」 手に取ったのは、毎日毎日読んでいる絵本。ボロボロでも、その絵本がどうしても好きだった。 「それがいいのね」 同じ絵本でも、母は優しく笑ってくれる。 本を抱え、私が座る定位置は……母の膝。 ちょこんと腰かけると、後ろから両腕で抱き締めるように本を持つ。 毎日毎日変わらない、私だけの時間。絵本を見ることより、母にこうしてもらう一時が好きだった。
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