なくしたもの

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ドアを開けるとネコのちーちゃんさんがこれでもかと言うくらいに額を彼女の脚にこすりつける。 「ちーちゃん、ただいま。」 彼女は愛しそうに抱きかかえてリビングへ向かった。 自分は少し遅れてリビングに入り、コーヒーを作るためにケトルに水を入れる。 自分は後少ししたら仕事へ向かわなければいけない。 ちーちゃんさんがいる、そのことで少しは安心した。 出来上がったコーヒーに、自分のものには砂糖、彼女のものには砂糖とミルクを入れて、テーブルまで持って行く。 「ありがとう。」 また、彼女は優しく微笑む。 ちーちゃんさんは落ち着いたのか、お気に入りのタオルで眠っていた。 ソファーに二人座ってコーヒーを飲む。 「ふう。」 一瞬、彼女の顔の筋肉が緩んで、そして歪めた。 彼女の瞳から涙がホロホロと出てきて、こちらに顔がな向いた。 彼女は自分に縋るように首に腕を巻きつける。 スローモーションのようだった。 彼女を慰めたい、でも、気がついたら自分も涙を流していた。
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