第拾陸章:我が刃の向かうは関帝

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 徐晃が問いかけると、少し時間を置いて全員が挙手した。  最年少の岳真ですら知っているのだから、当然か。 「恐らく、名前だけしか知らない者もいると思う。高順はかつて呂布軍の騎兵隊長をしていた軍人だ。その軍は千騎にも満たない少数ながら不敗を誇り、陥陣営と呼ばれていた。そして、呂広の戦の師である」  最後のところで小さなどよめきが起こった。  若い将校ほど、俺たちの天敵である呂広の師匠を知らないのだ。 「それと今までの話と、何の関係が?」  質問したのは副将の夏侯尚である。 「俺は若い頃、高順に打ち負かされ徹底的に高順の戦を研究した時期があった。そして、その戦術を我が物にした。今では不敗将と呼ばれているが、それも高順のおかげと言える」  少し誇称してしまったが、これくらいの方がいい。  その先の言葉を既に諸将は待っていた。 「砦を崩す戦など、高順が最も得意とする戦。最近は野戦が多かったが、久しぶりに俺も得意な戦ができる」  そこまで言って、徐晃は立ち上がった。  夏侯尚が続き、岳真が続き、全員立ち上がった。 「敵の防衛拠点は、はっきり言って手強い。だが、はっきり言おう。俺なら落とせる。力を貸してくれ」  ひときわ大きな歓声が起こった。  高順の名まで使った以上、もう後には引けないな、と徐晃は思った。
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