第拾陸章:我が刃の向かうは関帝

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 徐晃は、三千以上の歩兵を率いる将校を招集した。  訓練の仕上がりの満足度と、樊城の限界を秤にかけて、今行くしかないと判断したからである。 「先ほど物見が帰ってきた。それによると、はっきり言って敵の防衛拠点に隙はない」  徐晃が言うと、将校たちが一様に不安な顔をした。  いや、一人だけ平然としている。 「隙がなければ、作り出せばいいのですよね?そして、その手立てがあるから私たちが呼ばれた、と思いますが」 「その通りだ、岳真[ガクシン]」  夏侯淵の副将だった岳恩の子だった。  この席において当然最年少であるが、使えそうだ。 「樊城に行くまでの障害は三つ。まず偃城は大きく、正統派の城だ。次に四冢は、四つの中規模の砦の総称で、互いに連携し合う。最後に囲頭は蛇のように長い壁が続く長城だ。当然、この三つも連動する」  途中から、将校たちの顔が見れなくなった。  岳真を除く全員がうつむいたためである。 「しかも、敵軍は四万ですよね?関羽直属の騎馬隊も攻めてくるかもしれないのに」 「たった一万で関羽は于禁将軍の精鋭七軍を破ったのです。俺たちにどうにかなるのですか?」  殷暑と朱蓋がぼやき、徐商と呂建も頷いている。  岳真も諸将ほどではないが、目が泳いでいた。  仕方ない、と徐晃は思った。 「この中で、陥陣営高順を知っている者は何人いる?」
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