第拾陸章:我が刃の向かうは関帝

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 高い士気のまま、徐晃は出撃を命じた。  敵の配置は分かっている。  偃城に関平の三千騎と歩兵七千。  四冢に趙累の歩兵一万五千、囲頭に周倉の歩兵一万五千。  将兵の配置も一見して隙はない。  だが、戦術次第では崩せる。 「間もなく、偃城です」  報告通りだ。  一番最初にぶつかる砦が偃城で、しかもその指揮官が関平なのである。  作戦は決まっていた。 「無視だ。全軍、そのまま囲頭へ向かう」  軍略では城砦攻めには守兵の三倍の兵が必要だと言われている。  一つの砦を集中して攻撃すれば、落とす算段はあるのだ。  関平もそれを分かっているはずだ。  いや、分かっていなくとも、自分が最初に立てた作戦に従うしかない。  偃城を通り過ぎ、徐晃は軍をゆっくり進ませた。  そろそろか。 「偃城より騎馬隊!三千騎で関平と思われます!」 「将軍!前からも敵です!その数、一万!」  やはり砦の外に出て挟撃。  連動するとは、そういうことだ。 「俺が関平を受け持つ。夏侯尚は周倉にあたれ。岳真は夏侯尚の補佐。残る部隊は円陣を組み、次に備えろ」  そう、ここで終わるはずがない。  「趙累軍一万、接近中!」 「円陣で防げ。指揮は趙儼[チョウゲン]」  馬を駆けさせながら命じた。  あの三万の兵は、近くの城の守備や賊の討伐などしかしたことがないらしい。  このような大戦は初めてだと言う。
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