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始まった。
張遼が感じたのは、それだけである。
じっくり対峙してから戦うのかと思ったが、袁紹はいきなり十万の軍で白馬城を包囲してきた。
白馬城は劉延と言う者が二千の兵で守っているだけである。袁紹からすれば緒戦の血祭りというところで、手堅く一勝を狙ってきた。顔良を主将にしたのがその証拠だ。
「白忠、遅れている者は斬り捨てろ」
近くを駆ける副将に声をかけた。
「そんな者はいませんよ。殿がそれを最も知ってるはずです」
三千騎まで増やした騎馬隊は、徐州のころよりも厳しく鍛えた。夏侯淵にも認められている。
今、白馬城に急行しているのは自分の他に張繍の五千騎と許チョの二千騎だけである。合計一万騎。
「着いたら、すぐに突っ込みたいな」
もう一人の副将にも声をかけた。
といっても、一時的なものである。
「それは止めろ張遼。あくまで敵を観察して、だ」
関羽、字は雲長。乗っている馬は、あの呂布が大事にしていた赤兎の仔だ。
「それと、突撃にしてもわしを先鋒にしろ」
「手柄か」
それには関羽は答えなかった。
下ヒで孤立していた関羽を降伏させたのは、自分だった。ただし、仮のものである。
劉備が生きていればすぐに去る、という条件がある。虫がいいとは思わなかった。そういう男もいるのだ。それにこのような男は手柄をあげて恩返ししない限り去らない。
「伝令!白馬はまだ健在!顔良の首だけを狙って攻撃せよ!許チョ本隊は右から、張遼は左から、張繍は中央から崩せ!」
「承知したと伝えろ!」
曹操からの伝令に返した。
今ごろは、夏侯惇の師団が黄河を渡渉する構えをとっているはずだ。それに気を取られ袁紹は白馬に救援を送らない。隙をついて騎馬隊で奇襲。
これを考えた荀攸は、流石の一言だった。
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