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『ちょっと...心臓に悪いじゃんか』
実際に胸の辺りを押さえながら、ハハッと笑い返した。
"ごめんごめん。でも、和也君が悪いんだよ。全然、電話くれないし..."
『えっ、あっ...ごめん』
今度は、違う意味で言葉が出なかった。
社交辞令だとしても、彼女は連絡を待ってくれていたのだ。
携帯ごしに、心臓の鼓動が聞こえてしまうのではないかと思うほど、胸が高鳴っていく。
"ううん。いいの、こうして電話くれたしね"
『う、うん』
夢ではないかと頬をつねりながら、何とか話をつないでいく。
この後、僕たちは他愛もないことを飽きずにずっと話していた。
自分でも、よく話せたと思う。だけど、このときは一秒でも長く話したかった。
この電話を切ってしまったら、またしばらく話せないのではないか...そんなことばかり気にしていた。
その粘りが通じたのか、遂にデートの約束までこぎつけ、通話をきった。
彼女に言われた、"電話くれないし" という言葉が頭から離れない。
どうか、この恋が実りますように...
乙女のように何かに祈りをささげ続け、結局この日も眠れなかった。
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