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「待って、最後までちゃんと聞いてよ」
『でも...』
「だから、このままじゃ付き合えない。お互い、さん付けのままじゃ付き合えないでしょ」
『えっ?』
「付き合うんだったら、お互い呼び捨てにしなきゃ変じゃない?」
ニコっと笑う亜美の言葉が、一瞬、理解できなかった。
口を半開きにする僕に近づき、彼女はささやいた。
「今度からは亜美って呼んでね。和也」
そう言って、頬にキスをされた。
信じられないけど、僕は彼女...亜美と付き合うことができたんだ。
奇跡というものを信じなかった僕だったが、このときを境に、奇跡はあると言いきれるようになった。
それほど有頂天になっていた。
...
こんな初々しかった気持ちを今さら思い出して何になるのだろうか。
和也は、手元のぬいぐるみを握りしめた。
フラれてしまった以上、この想い出は何の意味も持たない。
思い返せば、どこから僕たちの関係は悪くなったのだろう。
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