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「これね、映像に合わせて、音楽や音声を繋ぎ合わせてるの。バラバラの音源を不自然にならないように、上手く繋ぎ合わせるのって、結構難しいんだからっ」
『へぇ...』と、画面を覗き込んだ。
モニターには、心音図のような波状型の線が無数にならんでいる。
「これを使うと、面白いことも出来るのよ。例えば、和也の声を繋ぎ合わせて、言ってもいない言葉を作ることも出来るの...」
「こんな感じに」と、亜美は右端にあるボタンをクリックした。
"あみ、あいしてる"
確かに僕の声だった。愛してるなど、恥ずかしくて言ったこともない台詞だったのだが、パソコンから僕の声が繰り返し流れている。
『ちょっと何これっ』
「ねっ、凄いでしょ?」
『凄いでしょ...ってか、何を勝手に作ってんのさ。こんなの作ってる暇があったら、仕事持ち帰らなくても済むじゃんか』
繰り返し流れている僕の恥ずかしい台詞に、照れ隠しで思わずそんなことを言ってしまった。
だが、この発言が不味かった。
「たったこれだけの台詞を作るのだって、今のわたしにとっては大変だったんだから。せっかく驚かせようと思って作ったのに、そんな言い方あんまりよ」
『ご、ごめんっ』
「いい、もう今日は帰って」
慌てて謝ったのだが、亜美の機嫌は直ることなく、この日は言われた通りに家を出た。
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