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彼女と喧嘩した日から、一ヶ月...
僕は、レストランに彼女を呼び出した。
"大事な話がある"と、伝えると、彼女はちゃんと来てくれた。もっとも、その真意はわからない。
「どうしたの急に? しかも、こんな高そうなレストランなんかで待ち合わせなんて」
『ごめんね。忙しいのに』
「ううん。ちょうど仕事も一段落ついたし、それに...大事な話があるっていうから」
亜美は、スッと顔を上げ、真っ直ぐに僕を見つめていた。
料理はまだ来ていない。けれど、その質問をされてしまっては、話を切り出さない訳にはいかなかった。
僕は、胸ポケットにしまっておいた小箱を取りだし、それを亜美に手渡した。
「なぁにこれ?」と、首を傾げながら、彼女はそれを開け始め、中身がリングケースであることに気がついたようだ。
口に手を当てて、目を見開いていた。
『もうこれ以上、すれ違いの生活をしたくないんだ』
「これ...」
『うん。まだ給料も安くて、小さなダイヤしか買えなかったんだけど、その内もっと良いのをプレゼントするからさ...』
『だから...』と、僕は背筋を伸ばした。
『僕と結婚してください』
その言葉を告げた瞬間、彼女の目から大粒の涙がながれ落ちた。
その姿に、僕の緊張の糸がほどけた。返事を聞かなくても、彼女の涙が答えてくれている。
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