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その答えが、このぬいぐるみだった。
"さようなら"
ボタンを押す度に、聞こえてくる別れの言葉。
どうして...
せめて理由を説明して欲しかったのだが、彼女の携帯は電源が落ちていて聞くことが出来ない。
女々しいと思われても仕方がないが、最後にどうしても一言だけ伝えたかった。亜美がパソコンで作っていた言葉...
恥ずかしくて言えなかったあの言葉を。
それすらも叶わず、僕は何度もぬいぐるみのボタンを押した。
"さようなら"
"さようなら"
.
.
悲しみに耐えきれず、彼女の名前を頭の中で連呼した。
そのときだった...
「和也、ごめんね」
突然、亜美の声が聞こえ、僕は思わず顔を上げた。
だが、そこに亜美の姿はない。声が流れていたのは、クマのぬいぐるみからだった。
何で違う言葉が?
不思議に思い、再度ボタンを押すと、またしても違う言葉が流れていく。
"本当にごめんなさい"
信じられない思いで、クマのぬいぐるみに手を突っ込み、中に入っていた機械を引っこ抜いた。
横に、SDカードが差し込んである小さなこの機械。同じ言葉が繰り返される普通のボイスレコーダーとは、明らかに違っていた。
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