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そしてついにやって来たクリスマスイブ。
朝の通学路で久しぶりに響先輩の姿を見つけた。
小走りで先輩に追いつこうとしたら、また向かい側から来た有紀先輩が
「響ーおはよ!」
と声をかけた…。
自然と絡む有紀先輩の腕がやっぱり私の胸をチクチクと痛めた…。
だけど…
もう今日しか先輩に声をかけるチャンスはないって思ったから、私はそれでも怯まずに先輩の背中を追いかけた。
「響先輩!」
私の声にビクっとした響先輩の足が止まって、ゆっくりと振り向いた。
「あ?…麻衣?どうした?」
立ち止まった響先輩の隣で、私をじっと睨みつける有紀先輩にビクビクしながらも、私は大きく息を吸い込んでから言った。
「あのっ…今日…
終業式終わったら…
少し時間もらっていいですか?」
少し戸惑ったような顔をした響先輩に私の心臓がドキドキして思わず視線を逸らして俯いた…。
…断られちゃうのかな…
不安な気持ちでもう一度、響先輩を見上げた。
「解ったよ。
んじゃいつもの場所でな」
ニコっと笑ってくれた先輩に私の顔も一気に笑顔になった。
「はぁ?響、いつもの場所って何??」
有紀先輩が聞いたけど
「有紀には関係ねーし。
っつーか、腕勝手に組むなっていつも言ってんだろ!」
って響先輩が言った。
「チェッ!女避けに協力してやってんのに、ありがたみのない男!」
…へっ?
女避け…??
ポカーンと見つめる私に、有紀先輩が言った。
「あっ、今の話内緒ね」
って笑ってる。
…そうだったんだ…
有紀先輩は…
響先輩の彼女でもなくて…
響先輩が好きだった訳でもなくて…
ずっと勘違いしてた自分がおかしくてクスクス笑った。
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