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「ははっ、知ってるよ。俺達は何でも知ってる。あんたに記憶が無いことも、なぁんでもな。俺は長田 幸之助(おさだ こうのすけ) だ。宜しくな」
男は私に握手を求めた。私は一瞬躊躇したが、その躊躇に明確な理由が見つからず、握手を交わした。無骨で大きな手だ。熱く、しっとりと汗で湿っている。
「長田さん、ですね。こちらこそ宜しくお願いします。でも、何でも知っているとは、どういう事でしょうか? 私には何も判らない。どうも理不尽で、不公平な気がする」
「ん、気にしない事だよ。ただ、俺達はあんたを知っている。あんたは何も判らない。そういう事は日常茶飯事、この世界はなんだって起こり得るんだぜ? 明日には地球が滅びるやもしれん、かと思いきや芸者に金をせびられ無一文になっているやもしれん、そういうもんだ」
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