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……でも、本物の美海がいる今、俺は邪魔者だと思うから。
高也にとって、俺はもういらない存在だろうから。
嫌だけど、辛いけど、終わらせたくないけど、今すぐ高也との関係を終わりにするしかないんだな、なんて事をぼんやりと考えた。
高也の邪魔にはなりたくないし、なんと言っても、高也に、海はもういらない、と面と向かって言われるのが怖かったから。
もしも言われたら、もう立ち直れない思うから。
だから、高也にふられる前に、俺の方からさよならをしないと。
物音を立てないよう、静かに家の中に入ると、絶えず甘い声が聞こえる高也の部屋のドアの前を通って、リビングに入る。
リビングに入ると、楽しかった思い出が頭の中を駆け巡った。
親の仕事の都合で、普段高也はコンビニ弁当を買って1人で晩御飯を食べていると知った時から、コンビニ弁当は高いし、健康に悪いから、という理由で、高也のために晩御飯を作るようになった。
ご飯を作ったり食べたりする時は、高也はいつも海ってちゃんと名前で呼んでくれて。
すごく幸せだった。
不器用だから、料理をする事は嫌いだったけれど、手作りの料理を出したら、高也が嬉しそうにしてくれるから、だんだんと料理をする事が好きになった。
初めは全然うまく作れなかったけれど、だんだんと美味しそうなものを作れるようになったし、つくれる品数も増えていった。
それに、高也は俺が作ったものはどんなものでもちゃんと食べてくれた。
料理が出来なかった頃の、こげこげの野菜炒めも、やわらかすぎる白米も、文句を全然言わないで、全部食べてくれた。
何でも食べてくれる高也をみて、俺の料理を文句も言わずに美味しそうに食べてくれる高也をみて、さらに高也が好きになっていったのを覚えている。
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