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「俺と付き合えよ。
俺を美海のかわりにしろよ」
俺の好きな人に彼氏が出来て落ち込んでいる時。
そう声をかけてきたのは、俺の好きな人――西山美海の双子の兄の西山海だった。
海が俺の事を好きなのは前から知っていた。
いつも俺を見つめていたから。
なので、告白されても驚きはしなかった。
でも、正直迷惑だと思った。
美海と海は二卵生双生児で、顔が一緒という訳ではなかったし、性格も真反対だった。
それに美海は女で、海は男で。
性別が違うので、絶対美海の代わりになんかならなかった。
だから、今はそんな気分じゃないと、当たり障りのないことを言って、やんわりと断ろうとした。
でも、口を開く前にある一つのことが浮かんで、開きかけた口を閉じた。
それは、美海とさらに仲良くなるために、海を利用すればいいと言うこと。
海は元気いっぱいの美海と違って大人しい性格で。
たとえ俺と付き合っていても、それを誰かに言うという事はしないだろうし、別れる時もわがままを言わず、すぐに別れてくれそうだった。
だから、いいよ、と。
海の話に乗った。
海を利用して、美海とさらに仲良くなるために。
美海が彼氏と別れた時に、次は俺が付き合えるように。
すると何も知らない海は頬を緩めて、ふにゃりと笑って、ありがとう、って、そう言った。
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