-いつの間にか惹かれてた-

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僕が登山を始めたのは、小説の影響もあったと思う。 けれど、もともと幼少期の夏の家族旅行は、毎年が長野(他の県に行った記憶がない)だったくらい山に親しみがあったので、そういった下地も僕の中にはあったのだ。 だから、緑には好感をもっていた。まぁ、日本に住んでいて新緑や紅葉が嫌いだという人も少ないと思うが。 初めての自発的で本格的な登山は、富士山だった。 幼いころに、御岳山や高尾山など東京の山には登っていたが、それは登山とは呼べないだろう。 富士山、標高3776mの日本一有名な山だ。 気象庁観測官として、そして富士山頂の剣ヶ峰レーダー建設の一員として、新田次郎も富士山に登っている。 そして、彼が書いた人物、加藤文太郎もこれを1933年1月の厳冬期に登攀している。 たしか、気象庁に入庁したての新田と三菱内燃機製作所に勤めていた加藤は富士山で会っていた、とどこかに書いてあったような気がする。 その本をここでは思い出せないが。 こうした憧憬に近い記録をふまえて、僕は富士山へ向かった。
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