3人が本棚に入れています
本棚に追加
本編
「コン……コン……」
1人暮らしのアパートのドアを微かにノックするような音がした。
ドアをノックするやつは、唯一の親友の石川しかいない。
石川が来たらすぐわかるように、他の来客にはチャイムを押すようにドアの真ん中に貼り紙をして強要していたからだ。
いつもはドンドンとやかましいぐらいノックしていたから、石川に何かあったのではないかと思った。
急いで昼食のコンビニ弁当を食べ終え、チェーンを外し、ドアを開ける。
そこには、髪が酷くボサボサに乱れ、血走った目の下にはくまを作り、頬もこけ、変わり果てた石川が立っていた。
着ているパジャマも、何日も洗濯していないようで、シワが寄って薄汚れている。
「ど、どうしたんだ?」
石川は俺に、真っ黒いCDケースを差し出した。
「このゲームを……受け取って5日したら……誰かに渡すか、7日続けて……プレイして欲しいんだ……」
今にも消え入るような声で石川はそう言った。
「7日続けてプレイしたらどうなるんだ?」
俺はケースを受け取りながら訊いた。
裏返してもタイトルらしきものは書かれていない。
「それがな……死んでしまうらしい」
俺はそんなことは信じられなかったが、石川の変わり果てた姿を見ると、このゲームには何かがあるように思えた。
プレイできるゲーム機とゲームの内容を訊くと、DVDプレイヤーでプレイすることができ、夢の中で銃を使って徘徊している魔物を倒すゲームだという。
そして、夢から目覚めるまでに魔物を全て倒さないと、その夢は悪夢になるらしく、悪夢を見たくないプレイヤーは、睡眠時間を削ってまでもプレイし続けてしまうらしい。
どんな悪夢なのか訊くと、石川は答えたくないらしく、力なく最後に「すまん」とだけ言って、フラつきながら帰っていった。
普通なら押し返すところだろうが、俺はなかなか面白そうなゲームの内容や悪夢のことも気になっていたし、5日したらすぐにゲームに興味のなさそうな友達に渡せばいいと軽く考えていた。
最初のコメントを投稿しよう!