エッグスカラー

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用意された座布団に座ると、ふと、本棚が目に入った。薄い本がずらりと並んでいる。薄い本と言っても、巷で言う同人誌的なものではなく、背表紙に曲名の書かれた譜面だ。それがところせましと収納されているのだった。 まんべんなく目をやると、端の方に、ずいぶんと分厚いファイルがあった。ちょっと見てみようかと立ち上がる。どっこいしょっと。おっさん臭い立ち上がり方も板についてきたんじゃないだろうか。 ファイルを手に取ってみる。ルーズリーフやコピー用紙、中にはチラシの裏なんてものも入っている。適当に一枚手に取ってみる。歌詞のようだ。 「エッグスカラー、ね」 「何見てるんですか」 突然後ろから手が伸びてきて、ファイルを奪われた。中村が戻ってきたようだ。中村は少し恥ずかしそうに、ファイルの中を確認しながら、それを棚に戻した。棚に顔を向けている間に僕はエッグスカラーを折りたたんでズボンの後ろのポケットにしまった。 「音楽、やるのか」 「まぁ、少し。洋楽メインのコピバンですけどね」 そういわれてみれば棚に収まっている譜面はどれも海外のバンドのものだ。見慣れた名前のバンドをいくつかピックアップして、そこそこに話を広げる。
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