エッグスカラー（仮）

エッグスカラー

卵。卵殻、卵白、卵黄からなる。卵殻、いわゆるカラの部分は炭酸カルシュウムからできていて、その内側には卵殻膜という薄い皮がある。卵白は濃厚卵白と水様卵白の二層からなっている。卵黄にはひも状の「カラザ」がついていて、卵の中心に固定されている。卵黄は卵黄球の集合体である。衝撃に弱く、10センチ程度の高さから落としただけでも潰れてしまう。まるで人間のようじゃないか。世界につながるための紐、簡単に壊れてしまう中身。けれども殻は、どうだろう。バリアか壁か。僕は殻を、どう扱えばいいのだろうか。

中村は将来自分が死ぬと知っている、とても賢い高校生だ。地球上にいるどんな生き物も、彼を孤独からは救えないだろうし、楽しい出来事があると、孤独はますます深くなるだけだ。だから中村を生徒に持った僕の気持ちは、計り知れないほどの憂鬱をはらんでいた。実際のところ彼の言うことはもっともであると僕も思うし、そんな考えを持ったどんなガキも、結局死んでいないのだから、放っておけばいいと思っていた。甘い誤算。ある時彼は自殺を企んだんだ。正論と暴論の合わさった彼を、僕はどうして慰めることができただろうか。