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「・・・・・」
解放された少年は今度は隣の花壇の花に水を注ぎだす
「あたしの技も避けられないようじゃまだまだだのー。油断しすぎよー」
「精進します」
「てゆーかジュジュ偉いよね、毎朝雨の日以外必ず早起きして、花に水やりして」
「好きでやってることですから、偉くなんかないです」
ジュジュと呼ばれた少年、純は亜美の顔すら見ずに淡々と答えた
「今日みたいに学校休みの日くらいはぐっすり眠ってたらいいのに」
「ダメなんです、朝7時20分までに水をやり終えないと・・ダメなんです」
純は言いながら水やりを終えて、ジョウロをもとあった場所に置いた
「え、なんで?」
頭上にハテナマークをいくつか飛ばしながら亜美は聞いた
「・・・・・」
純は先ほどまで自分が水をやっていた花を見ながら、どことなく切なげな表情を浮かべる
――十年前――
太陽が眩しく輝いている朝
小さな男の子が何もせずに庭に立っている
そのクリクリとした大きな瞳に写るのは、花にジョウロで水やりをしている綺麗な女性
「♪~♪~」
鼻唄を歌いながら上機嫌の女性をただひたすらに男の子は見ていた
「・・・・・」
「♪♪~♪~」
目が合うと、女性は男の子に優しく微笑みかけた
それにつられて男の子も笑い、女性のほうへと走っていった
――――――
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