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あの戦いから1週間後。
漸く後処理も終わり、ユーリは僅かな平穏を楽しんでいた。
「何だか、普通の書類が懐かしいよ」
次々に目を通し、分別し、判子を押して行く。
だが、それも直ぐに終わり、ユーリは手持ちぶさたになってしまった。
「暇になってしまった……な?」
突然、視界に派手なピンクが写り込んできたため、思わずすっとんきょうな声が出てしまった。
よくよく見ると、それはドアだった。
基本的に茶色の部屋に、ドピンクなドア。
場違いも甚だしい。
半ば呆然としながら、そのドアを眺めていると、不意にドアノブがカチャリと音を立て、開いた。
入って来たのは、イケメンだが、どこか厳つい男性。
その髪や眼の色は、珍しい組み合わせの両方黒。
「!?!?!?」
「チィース、三河屋です」
びっくりして固まっているユーリを全く気にも止めず、男性は、訳の分からないことを言うと、執務室を無遠慮に見回す。
そして、部屋の隅に飾ってあった壺に目を付けると、呟いた。
「純金の壺……これ売ったらなんぼくらいするんやろ?」
まさかのセリフに、ユーリは一瞬唖然とするが、直ぐに気を取り直し、男性に声を掛けた。
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