一話

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「さて、と。まぁ、飯でも食え。話はそれからでも遅くねぇ」 先の見えないほどの長いテーブル。シエルが指を鳴らしたのが合図で、目を疑うくらいの料理の数。 「出しすぎだろ」 「限度というものを知らないのですか?こんな量、誰が食べるのです?」 「そいつ」 徐に指を差した先は、葵。頭をガリガリと音が立つまで乱暴に掻いている最中。 「え?私かよ」 「お前だよ。食えるだろ?」 「シエル様、いくらなんでも一応女の子なんです・・・」 「食えるけどさ」 リルが言い終える前に言い放った耳を疑う葵の一言。リル、綺麗な二度見。 「ほらな」 「も・・・いいです」 頭を抱え、今居る部屋を後にするリル。 その背中を見つめつつ、椅子を乱暴に引っ張り出し豪快な柏手を放つ葵。 「いただきます!!」 深々と頭を下げ、大きく息を吸う。後は、口に放るのみ。 ガチャガチャと音を立て、頬に食べカスを付け、スープは豪快に啜る。 食べ方のマナーとしては最悪。だが、大量にあったテーブルの料理は次々に只の汚れた皿になっていく。 最後の皿を割る勢いで放り投げ、ご満悦な表情と大きなおくび。まるでオッサン。 「さって、食った事だし話を聞いてやらんでもない!」 偉そうに椅子の上で膝を立て、ワイングラスに入った水を一気に飲み干す。 「その前にいいか?」 「何?」 「パンツ、見えてる」 そう、先程も言ったと思うが今、葵の着ているワンピースは丈が短いのです。 もう一回言います。短いです。 「うるせぇ、見るなエロハゲ」 「まぁいいや、本題にいくぞ。今からお前は地上に行き、落ちた全光具の回収、及び再度此処に封印してもらう」 「はい?」 急な早口、(葵にとって)難しい単語。理解するには少しばかり時間が必要のようだ。 小一時間、シエルの身振り手振りの懸命な説明を聞き、やっと理解に追いついた。 「つ~ま~り~、あんたが誤って落としてしまった光具とやらを探し出して封印しろ、そういう事ね?」 頭を抱え、シエルのドジっ子加減とフルに活動した脳が鈍痛を引き起こしているよう。
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