一話

15/15
前へ
/124ページ
次へ
真下から起こる眩い光、柔らかに吹く風、身を任せ光に飛び込もうとした瞬間。 「葵、お前まだそれ持ってたのか」 集中力の切れるシエルの問い。葵の額に浮かぶ青筋。 一言言おうとしたがシエルの細めている視線が気になって止まる。 視線、指先を辿ると葵の胸元に下がるロザリオ。 もう古ぼけて輝きは失われかけてはいるが、葵にとっては大事なお守りなのだ。 「うっさい・・・次集中力切らす事言ったらソッコー殺るわよ」 ロザリオを隠すように手で覆い隠し、再度法陣の中に飛び込む瞬間 「奴らが来るかもしれん、気ぃ付けろよ」 微かに光の筋から見えたシエルの真剣な目。消える微かな時間で見えた葵の勝気な笑み。 「誰に物言ってるのよ」 刹那に消える光。もう其処には葵の姿は無い。 消えた先を見つめ、徐に首元に手を突っ込みある物を取り出す。 それはロザリオ、ただ葵と違うのは銀色に輝きを放っている。 それに口付けするように、優しく、ゆっくりと目を瞑る。 「君の行く末に光が在らん事を・・・」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加