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「今日で二百年目・・・か」
ポツリと呟いた、気も遠くなりそうな長い年月。
「早いなもんだな」
大きな背凭れの椅子に腰掛け、頬杖を付き、物思いに耽っているこの男。
容姿端麗、少々タレ目がちな黄金の瞳。金の中短髪に、見た目が少し幼いせいかよく年齢より若く見られることが多い。
スラリと伸びた脚、細く長い手指、そして背中には大天使の証となる六枚羽。
全てが完璧に整っている男なのだ。
「シエル様、何をお考えで?」
モノクルの裏で細く笑い、物腰柔らか。シエルの右腕的ポジション。名をリル。
上品やら気品溢れるやら、その手の言葉はこの者の為にあると言っても、過言ではない。・・・だが。
「リルか。いや、少し考え事を・・・な」
「おや、シエル様が考え事とは珍しい。明日は、槍が降りますね」
「・・・お前な・・・せめて、雨にしろよ」
毒舌なのが、玉に瑕。
「失礼。ですが、シエル様。お言葉ですが・・・」
「何だよ。言ってみろ」
その時のシエルの眼光。発せる身体にまとわりつく、痛くも冷たい空気。
今すぐにでも殺されると思う程の、殺気。
「・・・いえ・・・失言です。お許しを」
後ずさる形で、部屋を後にする男にシエルは一つ、溜息を吐いた。
「まぁ、お前の言いたい事も分からんでもないがな」
小さく呟いた言葉の裏に見え隠れする、黒くも愉快な計画があった。
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